2019.04.24

TALKING ABOUT "SONAR-FIELD" – Crosstalk vol.1-2

坂東祐大(代表)×  稲葉英樹(デザイン)×  前久保諒(制作)

"いろいろな「現在進行形」をあわせる"

 2019年3月に開催したEnsemble FOVEの”SONAR-FIELD”公演を皮切りに、FOVEが目指す音楽の新しいポテンシャルに迫る鼎談第2弾。Vol. 1から一転して、話題は新年会の振り返りになって……? 

​(構成・写真:前久保 諒

 

 

▶︎坂東、稲葉、前久保によるクロストークPart1はこちら

“常に実験をしてないとつまらなくなっちゃう”

稲葉:このあいだFOVEの新年会に誘われて行ってみたら、すごくフレンドリーでしたね。でもみんなそれぞれ個人の奏者としての責任もあるし、なにかを目指してる集団だから、そういうところも含めて面白かったです。


前久保:メンバーがみんなアンテナ様々ですよね。妖怪が好きだったり、鉄道が好きだったり。
 

坂東:バックボーンがみんな違うほうが、集まった時におもしろいですよね。
 

稲葉:FOVEの場合はそうなりますね。

 でも仲がいいよね。そういうのが面白いなあとも思う。僕からするとクラシックの人たちはなかなか身近にいない存在だけど、FOVEには不思議な親近感を感じるよね。僕も実験的なプロジェクトをよく作ったり、それが何かの役に立てればなっていうのはあるんだけど、常に実験をしてないとつまらなくなっちゃうところはあって。僕は技術や技能的な部分にとても興味があるから、より売れるデザインを作るというよりも、あのデザインはあそこがいいよね、っていうところが大好きなんだよね。そういうことをやってるとちょっとつじつまが合うかなって。

前久保:なんというか、売れようとしてやってるグループじゃないと思うんですよ。新しいこと、面白いことやりたくて。
 

稲葉:実際はどうなの?奏者や坂東さん、前久保さんも、売れっ子にもなりたいなっていう人はいたりするの?
 

坂東:売れるっていうのがそもそも何なんだろう……本当にわからないですね。

たとえば、作曲家で売れるっていうのは、たとえばハリウッド資本で世界中で公開されるみたいなビッグバジェットの劇伴やります、っていうのなら「売れる」って明確に言えると思うんです。

でもアーティストとしてやる場合は、たとえばオーケストラの大きな委嘱作品を取ってきたら、売れっ子っていうのかな……?でも内容がそれに伴ってなかったら全く意味ないと思うし。そもそも作曲家という存在が、どこまで興行に影響力あるか正直わからないですよね。

 

前久保:ちょっと表現を直すと、即売れたいわけじゃない、みたいな……?
 

坂東:うーん、ただ不本意な形で世に出たくないっていうのはありますね(笑)
 

稲葉:いま売れっ子っていう言葉が出てきたけれど、よく聞く言葉じゃない? あまり好きな言葉じゃないな(笑)
 

坂東:モノが面白いこと=売れてる、じゃないですよね。
 

稲葉:数字だけでは面白くないからね。
 

坂東:「売れてるから作品が良い」って、ジャンルとして健全な状態だと思うんですけれど、そういう評価の軸って音楽だとなかなかむずかしいと思うんですよね。
 

稲葉:わかります。アートやデザインでも同じで、定義が難しいからね。工学的に考えると、新しいコンセプトによって売れるっていうケースがある。電気自動車や、スマートフォンの登場、リサイクルシステムなど、売れる+仕組みとしても画期的だった、というのがハッキリと評価できる。視覚や聴覚の領域だと、このへんはすごく曖昧だよね。何をもって優れてるというのか。

“社会だけでなく生物的にみないと本当に面白いと思えない”

坂東:いい悪いって、目的があっていい悪いならわかるんですけど、なんとなく流されていい悪いと判断しちゃうとか、誰かが言ってるからとか、よくわからないまま進んじゃってると思うんですよね。そういうときに「教養」を使って考えることってすごく役に立つと思うんです。この価値基準はわからないけれど、比較して考えることができる、っていう。
 

稲葉:ほかのことと当てはめ直したりしてね。
 

坂東:それで自分で考える力とか。堅苦しい考えかもしれないけれど、大事なことだと思います。
 

前久保:新しいものとか、フレッシュなものを受け取るための感受性にも関わってきますしね。
 教養は大事だと思うんですけど、一方で音楽を通して教養を考えるのってちょっと抵抗を感じることもあります。たとえばクラシックを聴くという態度が、教養のツールとして見なされてきた側面もある。ワーグナーなりマーラーなりについて意見のひとつくらい持っておいて当然と思わせるような……。もちろん否定するつもりはないし、語れた方がいい。だけど教養の名の下で語れることを圧力的に示すのは、ちがう話なんですよね。つまり「教養は大事なんだけど、そのキョウヨウじゃなくて……」と言えるようになるのは結構難しいと思います。すごく時間がかかる。

 さっきの売れる売れないの話にもつながりますけど、FOVEは時間をかけてよさを表現していく活動をしていると思うんです。公演だけに限らないで色んな角度からアンテナを張ってやってる。その活動の先に、すごい面白いと思ってもらえる、っていうゴールみたいなものがあるのかもしれません。


坂東:ちょっと啓蒙主義的なのかもね。
 

前久保:FOVEのプロジェクトは、「これ面白いじゃん!」てハッキリと打ち出しているように見えます。
 

稲葉:日本国内だけでものを見ていると、どうしても国内だけで考えちゃうけれど、人類的に観て他のカルチャーへもって行ったとき、よりそれを面白いと思ってくれる人がいるかもしれない。そういう全体的に考えるようなことはあるんですか?
 

坂東:それはあります。自分に培われてきた面白いものは、日本っていうフィルターだけでなくヨーロッパで見てどうか、っていうのが同時に走ってるところもあるので。
 

稲葉:その葛藤ってあるじゃない。たとえば海外の人がみて面白いだろうっていうものがあって、「でも日本の人だと面白くないかもな」っていう葛藤があって。一方で両方いけるかもしれないものもあって。
 音楽や視覚を相手にすることは、人間を相手をしてるってことだから、社会だけでなく生物的にみないと本当に面白いと思えないよね。売れる売れないとか、それに向けて作るのはおかしなことになっちゃう。特に実験的なものとかを作ってる時に、確信を持つっていう作業って難しいと思う。あるときひらめくこともあるし、色々トライして「やっぱりそうだったんだ」って余分な時間を過ごすかもしれないし。でも確信が持てないと進められないっていう。

 

前久保:確信ってどうしても一人じゃ調達できないようなときもありますよね。

“目的に対してその手段をチョイスできることがとても大事”

坂東:僕は作曲するとき、書くことに没頭するのと同時に、それを俯瞰で見てるっていうのを同時に走らせている感じがあります。
 

稲葉:わかる。幽体離脱的なかんじは僕もある。
 

坂東:それで深夜になるとその力が落ちてくる(笑) 翌朝みたらなんじゃこれ!みたいな(笑)
 

一同:(笑)
 

稲葉:夜中のラブレターや日記みたいなね(笑)盛り上がってるんだよね。で、朝見て1秒で「これはないな……」ってなる(笑) やっぱり確信にかかわる問題だね。

坂東:自分で俯瞰で考えようとするんだけど、でもお客さんの反応みないとわからないから、常に疑ってるところはありますね。
 

稲葉:ちょっと完璧主義的なところがあるのかもね。そのあたりがゆるければ「わからないけれど進めてみよう」っていう判断にもなると思うし。僕も若い頃積極的に進めていたけれど、最近は確信を大事にしてる。たとえばクライアントが教えてくれたものが自分にとって全然ピンと来ないこともあって、だけどこれが当然のように世の中に流れているとしたら一大事だな、と思うこともある。

 ただ作っていくと完璧主義者になっちゃうところもある。構築の仕方や経験があるからね。もしちょっと酔っ払った状態でやってたら、適当にメールを送っちゃったりするかもしれない(僕はしないけど)。それはそれでアグレッシヴに動けるところもあるかもしれない。

坂東:割り切って作らないと作れない作曲もあるんですよ。本当に無心にシステマティックにやるようなものは、感情とか技巧とか飛び越えてコンセプトを体現することが大事なので、地図をつくるようなことに近いんですかね。ものによって作り方も変わってくるかもしれません。
 作り方の方法って色々あると思うんですけど、目的に対してその手段をチョイスできることがとても大事だと思っていて、これを間違えると結構大変なことになる。今まで僕は曲の規模だけでそれを考えていたけれど、いまはプロジェクトにまで広げて考えてるところなんだと思います。今までは稲葉さんと密に「この曲ならこういうデザインがいいんじゃないですか」みたいな会話をすることもなかったわけで。ここまで拡張してやってみようというところに、いまFOVEをやっていく面白さがある。ある種の信頼があって、もっと自分のわからない領域にまで引っ張ってくれる人たちと一緒にやってる、ということなのかな。

 

稲葉:単純作業みたいな作り方は、他の人でも作れるかもしれないし、時代が変わったらもっと違ったコンセプトができてるかもしれない。でも夜中のラブレター的なものって自分の勘違いしてるところも含めてさらけ出てるもので、人間性が高いものだと思う。そういうフォームにはまらないものって昔から魅力的に感じていて。もちろんコンセプトを決めてやるっていうのもやったことがあるんだけど、なんか時間が経つとあんまりよくなかったな、と思うこともある。
 たとえばさっきの話なら、奏者が集まって思いもよらないことをやるわけじゃない。そこに人間味があるというか、ある種のエラーが起きている。しかもある程度計算しながら作られているっていうのは、何年経っても印象深かったりしますよね。計画通りで、コンセプトありきでやるのでは、なかなか面白くならない。

​前久保:エラーというのは重要ですね。

稲葉:僕からみてて、FOVEっていう団体は「現在進行形」なものなんだと思う。そのなかには実験しているとか、みんなそれぞれの活動があるとかある。「現在進行形」っていうのは誰しも存在する状態ではあるんだけど、その「現在進行形」をよりクリエイティヴに進めていこうとするならば、どの方向性でそういう風に進めるのかを常に動かして考えてる。それは感じますね。

“そこ超えてっちゃうんだなあ”

前久保:以前運営方法について考えてた時に、「このアンサンブル、モデルがないね」っていう話になったことがあって。
 

坂東:そう、ないよね。現状いろいろ問題点あるけれど、考えていくことでのちに役立っていくことはあります。それがまだ楽しい。
 

稲葉:すごくよくわかる。FOVEみたいなグループをつくってやってみたら面白かったかな、とみんなをみてて思う。僕の分野では実際そんなことやってる人はいなかったし。バウハウスやスーパースタジオみたいな。でも必ずしもすごいものができるというわけではない。ただそういう状態もあるんだっていうことですよね。
 

坂東:そうですね。

 

稲葉:僕もFOVEに新年会ありますよとか、今回みたいに鼎談しましょうよっていう話は、全く違う分野だけどとても面白い。みんなは聴覚相手でぼくは視覚相手だけど、じつは似通った問題意識があるっていうことに気づく。
 逆に同業者と話してると、みんなもっとテクニカルだったり、ビジネスや組織として考えてたり、いろいろ計画立てて考えようとする。でも僕はそういうタイプじゃなくて、他の分野にもこういう考えないのかな?って思ってたらEnsemble FOVEみたいな団体が現れて、そうそう、そうなんだよね、って。

 

前久保:よくつながりましたよね。

 

稲葉:それはもうInstagramだから(笑)ただおのずとそうなっていったわけで、他でも起きているのかもしれない。逆に今度はFOVEの方に知らない人たちが絡んでいくのかもしれないしね。
 

坂東:そうなったらとてもいいですよね。
 

稲葉:SNSの力も大きいと思うし、これが現代的なのかもね。
 

坂東:変な自信じゃないですけれど、このチームだったらできる気がします。人によるとは思うけれどあまりストレスなく実現なくできるかなと。
 

稲葉:このあいだ新年会に集まったみなさんは、全くストレスなさそうだったね。二つテーブルあるうちの片方はガンプラの話してたし。
 

一同:(笑)
 

稲葉:しかもジェネレーションも似てるし、掘り下げが楽しそうだなあと。なるほど、掘り下げ感は音に出るなって(笑)
 

坂東:なんか自分のわかる範囲の掘り下げ具合で、ほかのところ見えてくることありますよね。
 

稲葉:好きなものとか没頭するものがあると、どうしても一線を超えてしまうじゃない。坂東さんとも、よく話をしてて、あーなるほど、そこ超えてっちゃうんだなあ、みたいな。
 

坂東:こわいな〜(笑)
 

稲葉:このあいだもゴジラ(GODZILLA’S ROAR)のときにフォントの話で突っ込んできてね。これはまあある種の文脈を意識してるものだけど、あんまりそこにも囚われず、FOVEは本当に自由でオリジナルティがあるものを大事にしてると思うから、そこ大事だね。
 

坂東:僕も稲葉さんと話してからフォントが気になってしょうがないですね(笑)
 

稲葉:そうなんだ(笑)僕も改めて音楽聞かなきゃあと思うよ。

(次回へつづく)

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Contact : info@fove.tokyo

photo:Yoshikazu Inoue, Nozomi Teranishi

Art by Hideki Inaba