2019.03.30 & 31
TALKING ABOUT "SONAR-FIELD" 2019
With Ensemble FOVE and Kei Machida (Zu architects)
出演メンバーと会場構成を担当した町田 恵さん(Zu architects) に、今回の公演やFOVEの活動のことを尋ねました。
(本記事は、2019年3月30日、31日にShibaruahouseにて行われた SONAR-FIELD にて配布された記事を再掲載したものです。)
──今回のSONAR-FIELD 企画について、聞かせてください。
坂東祐大 (作曲,Ensemble FOVE代表):昨年3月に初演をした "SONAR-FIELD"は、FOVEにとってはじめての企画で、当初から非常に多義的なイベントになるよう設定しました。コンサートホールではない場所で演奏を行い、さまざまな新しい発見ができるように、仕組みたいと思いました。
この構想は、最初は”音響建築”と名付けていました。場所・演奏の見せ方・音楽とが複雑に関連し合い、かつ常に新鮮さをもって聞き手が体験できることを念頭において作曲をはじめました。
こうして新しいカタチを実現できたのも、Zu Architects の 町田恵さんの建築の知見を存分に活かしていただいたことが、コラボレーションとして非常にポジティブな成果につながったのだと思っています。
町田恵 (zu architects):私にとってEnsemble FOVEとの企画は、録音技術と通信技術の発達によって「音楽を聴く」ということが変容している現在にあって、音楽と空間とを等価に扱うことで体験としての音楽を捉えなおそうという試みです。SHIBAURA HOUSEの5階の部屋から見える周囲の景色をどのように楽曲と一体化させるかということを考えた末、新しく物質的な要素を追加するのではなく、ただルールだけがある空間、というイメージが湧いてきました。
──SONAR-FIELDは昨年もこの会場で上演しましたが、再演にあたって変更したところはありますか?
町田恵:前回は純粋に建物と音楽の空間を体験させることを主眼にしました。今回はそれに少しだけ恣意的な秩序を与えることにより、どのような変化がうまれるのか(あるいは発生しないのか)楽しみにしています。
坂東祐大:音楽面でも前回からさらにバージョンアップを行い、作品として進化させることが必須だと思いました。今回のひとつのテーマとして、お客さんとのコミュニケーションをさらに進化させています。
中川ヒデ鷹 (Bassoon):それだけでなく、メンバーと編成が異なりますね。作品に関しても、前回より自由に演奏ができるような工夫がなされています。
──Ensemble FOVEとは、どんなアンサンブルですか?
伊藤亜美(violin):一人一人が偶然を大事に拾ってできた部分もあると思います。そもそも集まったきっかけは、まったく別のプロジェクトに坂東が参加して、そこへ面白い人しか誘わないように人選していったら、自然と目に見えないけど確かな絆や信頼が生まれていった。
それを、すぐに形にしようともせず、でも〈素敵で〉〈生産的で〉〈より良い〉要素を一人ひとりが拾い集めて持ち寄った結果、生まれたものがFOVEのひとつひとつの公演だと思います。そこには、時間が経つごとに個人が成長したり、メンバー間の1:1の対話や共演の経験なども含まれます。一人ひとりが過ごしてきた時間や、多面的な経験を活かせる場であることも、従来のアンサンブル/合奏団体とは一線を画するところだと思っています。
──FOVEの公演の「新しさ」ってどこにあると思いますか?
上野耕平 (saxophone):演奏会というよりはアトラクションなのかなぁ(笑) 聞くというよりは五感で感じるということ。
中川ヒデ鷹:SONAR-FIELD公演の特徴は、視聴者が移動するという点だと思います。視聴者が異なる体験をすることで、対象物への無言の大きなネットワークが生まれます。
──制作プロセスについて聞かせてください。
中川ヒデ鷹:FOVEの練習では、楽譜をフォローするだけでなく、次は何をしようかと各々が考えるための空白がとても大切だと思います。建築物の中を動き回るように、演奏者もまた作品の構造を使って自由な即興を呼応させています。
例えば、泡のオブジェではパルス(*規則正しい信号のようなリズム)が少しづつ変化して別の形や生物に見えたりする過程がありますが(ボクにとって!)その印象を決定づけるような即興の要素が入ったりします。毎回、音楽の微妙な変化をキャッチするのが練習のメインになっています。
大家一将:FOVEを通して改めて実感することは” 音楽は生き物”だということです。
リハーサルや練習でも、それは常にリアルタイムでうねるように変化し、空間の中に解き放たれます。メンバー同士が能動的に音楽を通して発信し合い、常に新鮮な感覚を持って取り組んで来ました。
パーカッションも既存の楽器のみではなく、おりんで出来た新楽器や建築現場で使われていた木片を選定し音楽に生かしています。「コンサート」というよりは、5感がフル活動の「体験」とも言えるSONAR-FIELD。ぜひその瞬間を皆様と一緒に共有できたら幸いです。
篠崎和紀(contrabass):とてもゾクゾクします。音に対する原始的な、しかしまったく新しい感覚に気付くことが出来ます!メンバー同士の有機的な繫がりが音と動きとリンクするととても楽しくリハーサルの回を重ねるごとに進化しています。メンバーの皆さんとても暖かく元気で、それも全部含めて皆様に楽しんで頂けると思います!
──今後のFOVEのプロジェクトについて教えてください。
坂東祐大:今年は新しく、FOVE RECORDS というFOVEの新しいレーベルを始動します。第一弾は伊藤亜美さんをフューチャーし、ロマ音楽(ジプシー音楽)を取り上げます。
伊藤亜美:私はずっとずっと、意図せず温めて来た「ジプシー音楽への愛」があって、それが今年、FOVEを通して花開こうとしていて、ものすごく楽しみです。ツィゴイネルワイゼンやチャルダシュ、ツィガーヌなど日本でも人気の曲たちは、私自身、何も考えずに弾ける、自分のオリジンを感じられるジャンルでもあります。
これらの音楽の生地である、インドから西欧へと渡った「ロマ民族」の奏でる音楽を、有名曲から意外な一曲まで味わい尽くしていただけるよう、1曲1曲を作曲家と演奏家の目線でしっかりと吟味し、料理して皆様にお召し上がりいただく日が待ち遠しいです!
坂東祐大:そして、もちろん次なる公演も準備しております!
上野耕平:個性豊かなメンバーが揃いすぎているから、個性を生かしたFOVEならではの濃いエンターテイメントをご期待ください!
中川ヒデ鷹:FOVEならではのプロジェクトであることはもちろん。公演だけで完結せずに視聴後に何かの(考える)きっかけになるような体験を提供できれば……と思います!
安達真理 (viola):これから、ますますFOVEでしか聴けないし体感できないことをみんなで仕掛けていきます。普段から奏者たちはかなり幅広めに活動しているにも関わらず、このEnsemble FOVEでしかできないこと、味わえないことがドンドン増えていって、中毒になりそうな予感です(いい意味で)。様々な課題はもちろんありますが、これからもみんなで「あーでもないこーでもない」と言い合って、とにかく面白いことをやっていくのだと思います。そんなポジティブで愛ある柔軟性が生み出す自由な発想で創るFOVEの今後に、ご期待ください!
──みなさんありがとうございました。本日はEnsemble FOVE presents SONAR-FIELDにお越しいただき、誠にありがとうございました。
Photo by Ken-ichi Sato
Ensemble FOVE presents “SONAR-FIELD”
日時:2019年3月30日 (土) 15:30-16:15 / 18:30-19:30
31日 (日) 14:00- 14:45 / 18:00-19:00
完全予約制:全チケット入場時間指定 (5分刻み、公演時間約60分)
会場:SHIBAURA HOUSE
主催:Ensemble FOVE
SHIBAURAHOUSE 2018年度フレンドシップ・プログラム 採択企画