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ルジャ・イニョ=ラダダ族の儀礼 "タズ二・タズ二" についての調査

Research : Yuta Bandoh

Co-Powered Project by Ensemble FOVE

#LUJAMUSIC

4 music from LUJA's RITUAL "TAZNI-TAZNI"

viola : Mari Adachi

 私はルジャ族 (正式名 ルジャ・イニョ=ラダダ族) の儀礼に伴う音楽に偶然ネット上で出会い、その複雑かつ独特な響きに強い興味をもった。

 

 彼らが演奏するオリジナルの音源(1930年頃収録音源)に関しては権利許諾を得ることができたので、以下のリンクから参照されたい。

​ルジャ族の儀礼 "タズニ・タズニ" より ウポン (オリジナル音源)

 これまでに行われてきた研究によると、ルジャ族と、またその音楽の大半にまつわる基礎資料は、時間の経過によって失われてしまっている。

 現在、その独自の音楽の構造分析、民俗学的研究、比較文化研究、また残された断片的な資料から失われた音楽を復元する研究など、多角的な調査が盛んに行われている。最近でも、2018年秋にはその失われた音楽の復元方法のひとつとして、 AIによるシミュレーションが発表され話題となった。

 

 私は、2019年1月末に、現地のルジャ族の遺跡を回るフィールドワークを行った。

 資料ならびにフィールドワークの経過の一部をここにまとめたいと思う。

▶︎儀礼 “タズニ・タズニ” について

 

 ”タズニ・タズニ”は、ルジャ族が執り行う様々な儀礼の総称である。

 

 タズニ・タズニは四年に一度とりおこなわれ、その儀礼は23の儀礼に区別することができる。

 この儀式は全ての工程を完了するのに、3ヶ月を要する。

 23の儀礼のうち、フィナーレを飾る儀式は必ず満月の日に催行される。

 タズニ・タズニは、儀礼の場以外でもその音楽を演奏することで効果を増すと信じられており、ルジャ族は儀礼で演奏される音楽を日常的にも演奏している。

 

 前述した通り、ルジャ族はすでに滅びているため、研究はおもに過去のフィールドレコーディングの記録や現存する楽器などから、様々な調査が行われている。

 

 以下は今回着手した、4つの儀礼についての概要である。

 

ヒホ (サザンカ讃)

 ルジャ族に伝わる料理 “ヒホ” (苦味のあるみたらし団子ような食べ物) を食べ、四方八方に祈る

 祈る際には様々な高い声や楽器で、独特の空間を作り上げる。


 

サムィプカ

 地声のようなうめき声としゃっくりのような高い声を早いテンポで行き来する。

 この歌唱法は “ミファキニ” と呼ばれ、ルジャ族の音楽では一般的であったようだ。

 サムィプカの儀礼では供物に火を付ける。これは精霊に供物を捧げるためと言われ、この儀礼は夜通しで行われる。

 

ウポン i ,ii

 タズニ・タズニにおいても、かなり荒々しく、攻撃的な性格を持った儀式。

 狂った様子を模した舞を伴う。

 敵に対して威嚇をすることからこのような音楽に発展したと考えられている。

▶︎音楽的特徴

 

 多くの音楽は動物の声からインスピレーションを受けている。

 非常に高度な音階をもっており、かなりの微分音がともなっている。

 声楽として発音するにはかなり難しいが、彼らはこうしたメロディーをいともたやすく演奏する。

 執拗に繰り返される音型は、儀式が進むにつれて変化を伴う。


 

 また全ての音が声と密接な関連性がある。

 彼らの楽器は管楽器、弦楽器、打楽器、声楽 の4種類に分けられ、

  それぞれ(声)にはポホス(糸の声:弦楽器 )ンブセ(風の糸:管楽器)ウセ(触れる+糸:打楽器)となる。

 それぞれ特徴的な音色のほか、それらを組み合わせて演奏されることもある。

 

   ルジャの音楽については、主に祭礼の性格が強いことから、彼らが儀礼を行う洞窟にて行われることが多い。

(儀礼によっては別の場所で音楽が演奏される、また音楽が伴わない場合もある)

 儀礼が行われたと推測される遺跡は現在でも残っている。以下の写真を参照されたい。

LUJA photo 2019 jan.jpg

(c) Ensemble FOVE

▶︎リアリゼーションについて

 

 今回のリアリゼーションはあくまでも、ルジャ族の音楽をクラシックの楽器に翻訳し、それらを再解釈し演奏することに焦点を合わせて行った。

 

 ルジャ族の音楽をEnsemble FOVEのメンバーにより再現を行う過程で、奏法に関して、メンバー同士で様々なディスカッションが行われた。

 (特にビブラートに関しては、クラシックでは通常使われないビブラートを熱心に研究した。)

 

 また今回はFOVEメンバーの宮下和也氏のエレクトロニクスにより、儀礼の行われた洞窟の音響を可能な限り再現した。

 

 エレクトロニクスの作業を施すうちに、ヴィオラの音響構造自体が楽器“ポホス”に近いことがわかった。

  今回は全23のルジャ族の儀礼のうち4つを再編したものであるが、さらなる音楽の調査と楽器による再構成した作品の制作は引き続きおこなっていくものである。

▶︎ 付録映像

  1月にフィールドワークに行った際の旅程

     音楽:メンバーの大家一将により、ルジャ族の打楽器 "ウセ(触れる+糸:打楽器) " をリアリゼーション、演奏したもの

LUJA's RITUAL "Tazni-Tazni"

Ensemble FOVE Co-Powered project

​©︎Ensemble FOVE 2019

▶︎ premier performance

 2019.02.19 (tue)

 Tokyo Opera City | Recital Hall

 B→C (Bach to Contemporary) Tokyo Opera City Recital Series

 

 Mari Adachi (viola)

 Kazuya Miyashita (electronics)

 Yuta Bandoh (sampler)

 Sampler Part 

   Kazumasa Ohya (percussion)

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