2019.10.01

TALKING ABOUT "SONAR-FIELD" – Crosstalk vol.2

中川ヒデ鷹(ファゴット) × 大家一将(打楽器)× 安達真理(ヴィオラ)+ ​坂東祐大(作曲)

 2019年3月に開催したEnsemble FOVEの”SONAR-FIELD”公演を皮切りに、FOVEが目指す音楽の新しいポテンシャルに迫るトークシリーズ。今回は3人の演奏家を迎えて、プレイヤーの視点からわたしたちのアンサンブルの特徴や可能性について語り合います。 

​(聞き手、構成:前久保 諒

「オブジェ」から「コミュニケーション」へ

──SONAR-FIELD が無事再演となりましたが、改めて今回の公演をどう感じましたか?

安達:リピーターの人が結構楽しんでもらっていた、というのが実感としてあって、それが嬉しかったですね。
ヒデ鷹:みんなが進化してるっていうのを面白がってくれたのかもね。あとは、なんか前よりもお客さんがSNSに投稿してくれてたような……。
安達:わたしたちの音楽そのものに興味のある人も増えてる感じがして、ありがたいなあと思いました。

 

──演奏しながらお客さんの表情はみえましたか?
ヒデ鷹:
前よりはコミュニケーションとれたかな。かといって見て何かするというわけではないけれど。
大家:前よりは距離感が近くなった気がしますね。
安達:私たちも慣れたところもあると思います。個人的には、前回は本当にオブジェになりきらなきゃと思ってやっていたから、できるだけコミュニケーションとらないようにしてました。前回は多久さんしか見えないポジションに立っていて、他の人たちがどういう動作をしてるのかわからなくて、だけど実は亜美ちゃんは人のこと見たり動いたりしてたのに気づいて、途中からコミュニケーションをとるようになった。そういう意味では今回、常にみんなのことが見えるようなポジションだった。反応し合えるのが新しくって面白かったですね。私たちもリハーサルのときに坂東くんが、目と目のやりとりとかやってみましょう、と言って実際にやってみて、指示されたところだけでなく自主的にもコミュニケーションもとってみたりして、だんだん膨らんでいったところがあります。

──それは前回のSONAR-FIELDの反省によるものなのでしょうか。たとえばTRANSの公演でも、ステージの6人のなかに密な連携があったと思うのですが。
ヒデ鷹:そうね。なんかピリっとした緊張感でなく、クールな緊張感だったかなと。
安達:そうだね。
ヒデ鷹:変にカタいんじゃなくて、楽しいことやったな、という緊張感。
安達:かなり真剣。
ヒデ鷹:でも堅苦しくはない。それにやっぱり2回目っていう慣れもあるし。
安達:もちろんメンバーの信頼関係もよりできてきたところもあります。
ヒデ鷹:TRANSはまた一味ちがった感じだよね。
安達:空間がカッコよかったからね。
ヒデ鷹:TRANSの方がオブジェらしかったかもしれない。昔ペプシコーラを買ったときについてきたフィギュアのシリーズみたいな…(笑)
坂東:スターウォーズのとかですか(笑)
ヒデ鷹:集めてた!(笑)あのフィギュアみたいにオブジェ化してたように思うけれど、SONAR-FIELDはどちらかというと……。
安達:観客を巻き込もうとしてたかもしれない。
ヒデ鷹:そう、そうだね。
安達:前はどちらかというと、わたしたち演奏者が「見せる」ようなポジションだったけれど、今回はぐるぐる回ってみたりして(みんなにぶつからないように気をつけたけど……)、あえて近づいてみたり、間を持たせてみたり。 驚かせたいっていう下心もありつつ、音楽や空間をみながらそういった行為がより積極的にできたと思います。
大家:観客との距離感が、ある意味で俗っぽくワァーッとならず、でも一方でオブジェ的要素もあり、その混在しているバランスがいいなと思いました。
安達:うんうん。

Viola:安達真理

「額縁のない音楽」

大家:前回も良さがあったけれど、今回楽しいなと思ったのは、本番直前に結構いろいろ決めたりすることがあって、その「予定調和じゃない」ところが新鮮だったかなあと思いますね。いつもだとあらかじめ決めたことをやるっていうことが多いけれど、そうじゃないところが新しい。
ヒデ鷹:逆に演奏する方も聴く方も遊び方が増えるよね。
 めっちゃマニアックな話をすると(笑)オルガ・ノイヴィルト(Olga Neuwirth)のあるエレクトロ二クスとアンサンブルの作品があって、2時間くらい休憩なしで続く。演奏してエレクトロ二クスだけのパートが続いて、また演奏して……っていうのを2時間ずっと真剣に聞いてたらすごい疲れちゃって。
一同:(笑)
ヒデ鷹:だけどノイヴィルトによると「あそこ(エレクトロニクスのパート)は遊びだから、ぜんぜん真剣に聴く必要はない」らしくて、それを知っていたら、もしかしたらもっと楽しめたのかもしれないなあ、と思ったことがあります。最初のSONAR-FIELDってわりとそういう感じがあった気がして、今回はそれに比べて抜けてきた感じがしたかな。
安達:いまはキメる瞬間、いまはそうでない瞬間、みたいな。
ヒデ鷹:解説でも書いたことなんだけど、「建物の中で走り回る」みたいな時間もあって……。
安達:そのときいるお客さんの雰囲気によっても変わりましたね。満員のときと、公演はじめの少し席が空いているときとか。なんとなく熱みたいなものを感じました。物理的に人がいない時は空間がとても響くから、そのときの集中の仕方も変わる。見られる視線がない分、わたしたちが音にフォーカスしていく時間になる。逆に人がたくさんいると、わりとパフォーマンスで魅せていく方にシフトしていって、本当に四方八方みてほしいような感じ。それこそリピーターをしてくださった方もいたけれど、その方たちにも毎回ごとに違うものをお見せできたのかなと思いますね。
大家:ふつう客席とステージってはっきり分かれているけれど、そうじゃない今回のかたちは改めて面白いなあと思いました。
安達:わたしが公演中に部屋の端にいるときがあって、そのときすごいお客さんが躊躇しちゃうくらい距離が近くて(笑) そういうときはあえて楽器を見せちゃうことをしてみたり。近いからこそできたことがあります。たとえば子供向けコンサートで、子供が体育座りとかして聞いているようなときでもこんなに近づくことはないし。
大家:たしかに。
安達:毎回いろんな楽器のそばに人がいて、生の音をすごく近い距離で感じられたことが新鮮だった人は多いんじゃないかと思います。
大家:スマートフォンの撮影の音とか、飴の音だって普段は気になっちゃうけれど、今回思い切ってOKにしましたよね。実際いろんな人がシャッターを切っていたけれど、これは小室敬幸さんもレビューで書いていたことですが、「あ、いいんだ!」って。あの空間だとなにか自然な感じがして、あれすらも良い感じで、演奏していても初めての経験でした。
安達:良き無法地帯というか(笑)

 

──かなり踏み込んだアプローチだったと思います。
ヒデ鷹:
演奏者の側からしても、投稿はたくさんしていただいた方がいいよねと思います。

 コンサートホールでクラシックを聴いたり美術館で絵を見たりするとかのとちがって、FOVEの公演はどこまでが対象でどこからが対象じゃないのかが曖昧になっていて、実は見ている方も対象物になっているようなこともあって……。そういう意味ではエレベーターに乗ったところから始まってるとも言えるし。いままでと違うところところかなと思います。額縁がない、みたいな。
安達:楽譜を見せるのがすごいなっていう意見がありましたね。すべてのネタバラシをしているみたいで。
ヒデ鷹:ああいう風に改めてスコアをみると、「おぉー」って思うよね(笑) 演奏しているときには気づかなかったけれど、スゴいものつくってるなという感じがしてくる。

 

── たとえばTRANSで同じようなアプローチをしたとしたら、同じような効果を作れると思いますか?
ヒデ鷹:
そこは公演によるでしょうね。場所によっても時間によっても変わるだろうから、目的によって考えた方がいいと思う。
安達:わたしはTRANSは撮っても良い気がしますね。
坂東:個人的にTRANSは、SONAR-FIELDみたいにもう少し奏者が動いてもよいかなと思うところもありました。自由に動ける奏者を増やして、言ってみればショーみたいにしちゃうのもアリかなと。
ヒデ鷹:そうなると公演をやる場所が大事だね。場所によると思う。
 大阪のユリコンのあとメンバーでUSJに遊びに行ったけれど(笑) ジュラシック・パーク・ザ・ライドに乗ると特に前の方の人とか水かかったりするじゃないですか。僕はFOVEの公演とちょっと似てるんじゃないかなと思います。この席はとても音が大きく聴こえるとか(笑) いろんな人がいろんな角度から体験して、しかもWebに拡散されてその情報を見る人もいて……。それぞれの体験から作品のかたちをはっきりさせるんじゃなくて、モヤモヤのまま残しておくのは大事なんじゃないかと思います。
安達:普通のコンサートホールでも席によって聴こえ方が違うけれど、SONAR-FIELDはそれ以上に座る席のちがいが大きいわけで、その人の運みたいなものが大きく左右してますね。
ヒデ鷹:コンサートホールは基本的に客席ごとの差をできるだけなくす方向性で考えられているけど、これはまったく逆。

Percussion:大家一将

メンバーがそれぞれの振り切れ方を持っていて

──ちょうどユリコンのときのエピソードが出たところで尋ねてみたいのですが、ユリコンでも自主プログラムでも、同じEnsemble FOVEとして出演していますよね。そのあたりはどういう風に感じてますか?

安達:うーん……。やっている音楽というか、やる感覚が同じというか。音楽が持っているパワーがあって、それぞれの音楽にできることとできないことがある。SONAR-FIELDで何万人の人たちを一気に沸かせることはできないわけで(笑) ただ、わたしたちの音楽家としてのスタンスはあまり変わってないと思います。いいものをみんなで作って楽しいっていう。

ヒデ鷹:そうですね。そういえばSONAR-FIELDはわざと舞台監督を置かなかったんですよね。面白くなくなっちゃう気がして。

坂東:そう。舞台監督はむしろ置かない方がいいと思いました。

安達:FOVEではわりとメンバーそれぞれに投げてくれるところが大きくて、もちろんダメだと却下されることもあるけれど、基本的にやりたいことは自由にさせてくれていいなと思います。

ヒデ鷹:亜美ちゃんと合わせているときとか、ときどき振り切れててスゴイな、僕も答えないとな、って思うことがありますね。

大家:振り切れちゃったほうが楽しい。ちょっとでも照れてたりする瞬間に気づくと興ざめすることもあったりして。

ヒデ鷹:そうなんだよね。

大家:そこを超えて振り切ってくれると、心から楽しんじゃいますね。FOVEのみんなはそれぞれの方向で振り切れ方を持ってると思います。

安達:みんな出方はちがうけれど、それぞれの発揮の仕方があると思います。

ヒデ鷹:お互いに邪魔し合わないのも面白いね。

安達:いや、そもそもお互いが被らないんじゃないかな(笑)

ヒデ鷹:それはそれですごいことだけれど(笑)

 SONAR-FIELDのときも演奏メンバーの個性がだんだんわかってきて面白かったですね。リハーサルのときに、對馬佳祐さん(ヴァイオリン)がすごく真剣に弾いてたら、坂東くんが「いや、もっとふざけて!」ってその場でパート譜を取り上げてて(笑) 

安達:對馬さんがあまり嫌がってなさそうだったのもまたね(笑)

ヒデ鷹:なんかFOVEらしいなあって(笑) 浅原由香ちゃん(オーボエ)も本番の後半のほうになったら走り回ってたからね(笑) リハーサルも、リハっていうか脱皮ですねもはや。

坂東:初回と一番最後の回だけ買って体験するのが面白いかもしれないですね。公演期間中の変化を垣間見たりして。

ヒデ鷹:それは面白いね。

 

──そういえば、今日ここにいるみなさんは全員、真理さんの「B→C」を聴きに行っていましたね。

ヒデ鷹:「ルジャ族」ね!本番すごい盛り上がったね。

安達:演奏終わりにブラボー!って聴こえてきてびっくりしちゃった。公演前に坂東くんとかとあんみつ食べに行きながら悩んでて、それで本番こういうふうになって……(笑)

ヒデ鷹:そのときは地代所くん「ゴジラ」のプロジェクトも進んでましたね。「ゴジラ」も「ルジャ族」は全然方向性が違うけれど、どこかで通じてるところがあるような気がします。

安達:「ルジャ族」の練習のときに、多久さんが演奏の手本になるようなサンプルをいくつか録って、「真理さん、こういう風に弾いてください」て送ってくれたんだけど、ものすごくプレッシャーで(笑) 多久さんよりうまくできるわけないでしょうって……(笑)

坂東:よく考えたら多久さんは直近のTRANSもSONAR-FIELDも出てないんですよね。

安達:ほんとだ!

ヒデ鷹:ソロを入れ替わりでも面白いかもね。それか三十三間堂みたいなかんじで全員集合バージョンがあってもいいし(笑)

Bassoon:中川ヒデ鷹

「キレイ」や「美しい」の中身が変わる

ヒデ鷹:TRANSはまだ東京でやってないから、やりたいですね。個人的にはTRANSに出演したことで、どうして自分がFOVEで演奏しているのかっていうことがわかってくれたような気がします。ああいう演奏はほかではできないから。

安達:ヒデ鷹くんの演奏した曲はどう難しかったんですか?

ヒデ鷹:うーん…まあ難しさは別にして(笑) 個人的なことだけれどFOVEをやることの位置付けがみえてよかったと思いますね。

安達:わたしはFOVEでやるようになって、音楽の全体的な視点が変わった気がします。普段のクラシックのコンサートにしても、どこに注目するかとか……。聴き方や頭のなかが変わったような気がします。

ヒデ鷹:アップデートされるものなのかもしれない。

安達:なにか殻が破れたような、破れつつあるような。それが自分のタイミングなのかどうかはわからないけれど……。ただかなり個性的な人たちと、とても濃密な時間を過ごすわけで、普通では得られない刺激をいっぱい得られるし、私も面白いことをやりたいなって思うようになります。

ヒデ鷹:いまeスポーツってあるじゃないですか。eスポーツを「ケガしないのはスポーツじゃない」「汗をかかなきゃスポーツじゃない」って言って認めない意見があって。そうすると、じゃあスポーツってなんだろう、って考えるんです。同じことが音楽にも起きていると思います。個人的にあまりキレイとか美しいとか言いたくはないけれど、そういう単語をつかうときの中身が変わってきてる。

大家:そういう意味では、今回お客さんが公演中に動くっていうのは重要なことだったと思います。

安達:そう思います。

大家:いままではどうしてもお客さんの立場になったときに受動的な態度になってしまうところがあるんだけれど、SONAR-FIELDは受動と能動が交差する感じがあって、そういう感覚は初めてだったかもしれません。ほかのアートだとあるかもしれないけれど、少なくとも生演奏では初めてだったと思います。

坂東:町田くんが「今回で全メンバーの半分が観客として聴けたね」って言ってて、すごくいいこと言ってるなあと思いましたね。

ヒデ鷹:そうだね。

大家:全然見え方が違うよね。僕もTRANSはお客さんとして体験したけれど、メンバーがみんな神々にみえて。本当にいつも一緒にやってくれてるメンバーなのかな?ってくらい。

一同:(笑)

ヒデ鷹:神々!(笑)

安達:でもTRANSは特にそういう見せ方の工夫が多かったと思います。

坂東:ただ、一方でお客さんがもっと能動的に体験できる状況を作らないととも思ってます。TRANSは自由に見る角度を変えられるようにしたけれど、それでも座りっぱなしだったから、今度は立ちでもOKなようにするとか……。

 

安達:さっきヒデ鷹くんが少しFOVEの位置付けの話をしたけれど、他のメンバーはどう思ってるんだろう?

ヒデ鷹:自分で決められることとそうでないこととありますからね。

安達:いや、世の中的な意味でなく、あくまで個人的な意味で、ですね。

 

──そうですね、使命感みたいなニュアンスではなく、それぞれのFOVEの位置付けは気になりますね。

安達:ただやっていくうちに使命みたいなものは感じてくるのかもしれないですね。

坂東:やっぱりこのアンサンブル自体にモデルがないし……。それに、僕たちのあとで同じようなアンサンブルが現れるのかもちょっとまだ分からないなあと思います。

安達:追い抜かれるにしても追い抜くにしても、FOVEはFOVEの道をどんどん進んでいっちゃえばいいと思います。わたしはそこまでアイディアマンではないけれどね(笑)

坂東:いや、みんな打算してたらそれはそれで変だと思う(笑)

 全然脱線するんだけど、このあいだボクシング観に行かないって誘われて。それでふとプロレスファンってクラシックファンと近い気がするなあと思って。すごくマニアックにディープにのめり込むんだけど、かといってアカデミックになるわけじゃないところがあるなあと……。

ヒデ鷹:えっなになに?プロレス? ステージで電流がバシーンッて流れるみたいな?

坂東:それは嫌だなあ(笑)

ヒデ鷹:それは冗談だけど(笑) でも前に多久さんと動物のプロレスみてみたいよねって話をしたことがあって。

安達:えっどういうこと?

ヒデ鷹:カバVSゴリラみたいな……(笑)

一同:(笑)

Photo by Ryo Maekubo

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#EnsembleFOVE

© 2019 Ensemble FOVE / FOVE Records

Contact : info@fove.tokyo

photo:Yoshikazu Inoue, Nozomi Teranishi

Art by Hideki Inaba